門司港は「海賊とよばれた男」のモデル・出光興産創業者 出光佐三 ゆかりの地(1)
出光佐三の人生を変えたのは、淡路島出身の資産家・日田重太郎との出会いでしょう。佐三は酒井商店で働きながら日田の息子の家庭教師していて、その縁で独立を進められ資金を提供されたとのことです。まだ若干25歳の若者に現在の価値で約1億円にもなる資金をポーンと出すなんて、佐三は人間的に、そしてビジネスマンとしても相当魅力があったのだろうと思います。その時、日田に言われた約束を生涯に渡って貫き通したのだと思います。
「働く者を身内と思い良好な関係を築き上げろ。己の考えを決して曲げず貫徹しろ。そして私が金を出したことは他言するな。」
「海賊とよばれた男」の映画の中では、日田重太郎は年配の設定ですが、実際は佐三と一回り位しか違わない年齢だったようです。
出光佐三は、日田に提供してもらった資金を元手に、1911年(明治44年)、著しく発展を続けていた門司に「出光商会」を設立します。当時の門司は鉄道と海運の要所として栄華を極めていて、ビジネス環境として最適の場所でした。もちろん、故郷の宗像に近かったことも門司を選んだ理由だったのでしょう。くしくも、高畑誠一が行った鈴木商店も門司に一大コンツェルンを作り始めていました。1904年(明治37年)に「大里精糖所」を開設し、地の利を活かして大手「大日本精糖」を圧倒、1907年には「大里精糖所」を「大日本精糖」に売却することで莫大な資金を手にし、それが鈴木商店跳躍のきっかけになったと言われています。
鈴木商店は、その後も1911年(明治44年)に大里製粉所(現・日本製粉)、1912年(明治45年)に帝国麦酒(現・サッポロビール)、1914年(大正3年)に大里酒精製造所(現・ニッカウヰスキー)、1917年(大正6年)に神戸製鋼所(現・神鋼メタルプロダクツ)、1918年(大正7年)に日本冶金(現・東邦金属)などを次々に門司大里地区に設立していきました。
さて、映画の中では創業間もない出光商会の経営は必ずしもうまくいっておらず、出光が日田に「借金は必ず返します!」と頭を下げるのですが、日田は「貸した覚えはない、あげたんや」と言うシーンがあります。それが事実かどうかはわかりませんが、汽車に乗って筑豊の炭鉱地帯に行き、機械油を販売したものの全く成功しなかったのは事実のようです。その後、出光商会は船舶用の燃料油販売を手懸け商売が軌道に乗ると、1913年に200mほど離れた三井銀行門司支店直ぐそばに本店を移転しています。映画に出てくるシーンは実際の写真を元にしたものです。
オリジナル写真はこちら。
奥に見える特徴的な屋根を持つ建物は、元・三井銀行門司支店です。手前には路面電車の線路が写っています。出光商会の倉庫はこの通りを奥に進んで甲宗八幡宮前にありました。当時、元・塩田を取り囲むように作られた堀川(現在は埋め立てられて道になっています)で門司港の第一船溜と第二船溜は結ばれており、甲宗八幡宮前から船で関門海峡に出ることが出来ました。
現在の様子はこちら。昔の面影を残すものは何も残っていません。ちなみに、創業の地(上の写真の場所から約200m離れた鎮西橋交差点付近)にはレリーフが建てられています。
何故、出光佐三は海賊と呼ばれるようになったのか。出光が船舶用燃料油の販売を始めた頃は販売区域が決められており、門司から下関への販売はできませんでした。そこで出光が取った手段は「海上販売」という誰も思いつかなかった禁じ手だったのです。同業者からの非難に対して「船上売買の海上には境界は無い」と反論して販売拡大を続けたそうです。そのため、出光佐三のことを「海賊」と呼ぶようになったと言われています。まだ20代後半の若さだったこともあり、古い仕来りにとらわれず柔軟な発想でビジネスを切り開いていったのだと思います。
(つづく)
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