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2018/05/12

ニューヨーク Macy's デパートの歴史

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1800年代の半ばになると、ニューヨークの商業の中心はブロードウェイ沿いに北上してユニオンスクエア付近にまで達していました。アメリカを代表するデパートの一つ Macy's は 1858年、ユニオンスクエアから2ブロック西側の 6番街に R. H. Macy Dry Goods Store として誕生しました。Department Store という呼び方が一般に定着したのは 1890年代に入ってからと言われていて、それまでは Dry Goods Store(乾物屋)と呼ばれていました。

ユニオンスクエアができたのは 1839年です。当時は周辺に住宅地が広がっており、ニューヨークで最もファッショナブルが地域として知られていました。Academy of Music やピアノで有名な Steinway Hall もユニオンスクエア周辺にできて文化芸術の中心地でもありました(現在はいずれも痕跡すら無く残念です)。1840代頃からニューヨークの港湾整備が進み、1850年にはユニオンスクエアに最初のホテルが開業、そして間もなく Lower Manhattan に鉄道が開業しました。このように、Macy's がこの地に誕生する下地ができあがっていたと言っても良いでしょう。

RH Macys

Macy's は、徐々に取り扱い製品を増やしていき、現在では当たり前の「年末クリアランスセール」や「季節毎の店頭ディスプレイ」などのマーケティング手法を初めて取り入れ売上を順調に伸ばしていきました。6番街の一角から始まった Macy's は隣接地に次々と店舗を拡張し、1891年には13st Street 沿いに別館(現存)、1895年に 14st Street を挟んだ向かい側にタバコとリキュール専門店、1896年に6階建ての新館、そして最終段階として14st Street 沿いの別館(現存)を建築するなど、11棟ものビルを所有していたそうです。

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一番左の建物が 1997年に建造された 14st Street 別館(左 1986年撮影、右 2015年撮影)

1986年に行ったときは衣料品店になっていて中に入ったことがあります。昨今の店舗と比較すると、天井は低く店内は幅狭く、二階に上がる階段は一番奥にありましたが、すれ違うのも容易でないほど狭かった記憶があります。おそらく、以前は隣接する建物と内部で連結されていたのだと思います。この建物が Macy's だったことの痕跡は 2012年に撮った写真に見ることができました。現在は上図のように少し綺麗に改装されているので全く見えません。

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この写真、目を凝らして “心眼” で見ると、下の看板にうっすらと Macy's Star ★ マークと "M" の字が見えます。13rd Street の別館にはしっかりと "★" ロゴを見ることができます。

1870年頃からユニオンスクエア周辺には多くの商業施設ができ、1910年頃まで 6番街とブロードウェイに挟まれた 14st Street から23rd Street はニューヨークのショッピングの中心 Ladies Mile として栄えました。そんな中、Macy's は 1902年、更に Uptown の Broadway 34th Street、」Herald Square(現在地)に店舗を移しました。先賢の目があったというか、Ladies Mile は 1910年頃から廃れ始め、1920年代には廃墟同然となって忘れ去られることになります。当時の嗜好を凝らした豪華な建物は現在も残っていて、かつて繁栄していた頃の名残を見ることができます。

Ladies Mile にあったデパートをまとめた図をスキャンしたので添付します。(出典 The historical Atlas of New York City, Eric homberger, 2004)この図は間違っていて、赤枠で囲った店舗は1ブロック南側にありました。

Map of Ladies Mile

当時、Macy's の最大のライバルになっていたのは、シカゴからやって来た Siegel-Cooper でした。1896年に巨大なデパートを開業して、店内に噴水を設けるなど広い店舗を活かしたプロモーションで Macy's を刺激し続けていました。Macy's は言うなれば増改築した寄せ集めビルの集合体でしたので、苦戦を強いられたのだと思います。

Macy's が 1902年に移転した後、元 Macy's の建物はしばらく空き店舗になっていました。14st Street の重要な場所に巨大な空き店舗があると Siegel Cooper Department Store の営業にも影響がでます。Siegel Cooper は Macy's の跡地をなんとか借り受け、6番街と 14st Street の角に現在も建物が残る 14st Street Department Store を 1904年に開業しました。それでも時代の流れは止めることができず、6番街にあったほとんどデパートは 1917年の Siegel Cooper Department Store 閉店までに倒産、廃業してなくなりました。

1902年に移転した Macy's ですが、ビルの形は Broadway 側の一角が欠けた構造をしています。ここにもライバル Siegel Cooper との戦いの痕跡が残っているのです。実は、Macy's がビル建造計画を発表した頃、Siegel Cooper が Broadway 34th Street の一角を取得して、巨大店舗の建設を妨害していたと言われています。(写真は 1903年頃の撮影)

Macys 1903

1896年に開業した Siegel-Cooper Department Store は、当時ニューヨークで最大の店舗面積を誇り "Big Store" と呼ばれていました。Macy's が Herald Square にデパートをオープンすると "最大" ではなくなるので、それを阻止したかったらしいです。Siegel-Cooper は向かい側にあった B. Altman Department Store を統合するなどして抵抗しましたが、次第に業績が低迷して倒産に追い込まれます。 Macy's は 1911年にこの "角地" を購入しました。現在も別棟のような形でビルが建っていますが、上部には巨大な広告塔 Macy's Shopping Bag が作られています。

Macy's は 1924年に店舗を7番街まで拡張しています。そして、"The World's Largest Store" というキャッチフレーズを手に入れたのです。(正確にはわかりませんが、2009年頃までは "最大" だったらしい) 昔のデーパートの広告を見ると、売り場面積の広さをうたったものが良くあります。当時は「売り場面積の広さ = 品揃えの多さ」としてアピールしていたのかもしれません。

今年で 112年目になる現在の Macy's の建物。商業地の北上が続いてきたニューヨークでは 100年以上も同じ場所で営業を続けることはありませんでした。交通網の発達は商業地の分散をもたらし、一地域に客足を集める必要がなくなってきました。顧客の購買パターンの変化はデパートの存続に大きく影響します。それは日本でも同じ事で、数多くのデパートが閉店、倒産が続いていることでもわかります。さらに、昨今はネット販売が増加しているので店舗販売はますます窮地に追い込まれています。

Macy's は巨大デパートに成長しましたが、R. H. Macy 創業家が現在も事業に関わっているわけではありません。「Macy's」はデパートのブランド名と言っても良いです。

Macy ファミリーが経営していたのは 1895年までです。R. H. Macy & Co. は、Macy's Store で陶器などを販売していた Straus 兄弟に事業を買収されます。1902年に移転を決め、事業を拡大したのは Straus 兄弟なのです。兄弟の一人、Isidor Straus は 1912年のタイタニック事故で亡くなりました。

R. H. Macy & Co. は、1992年に一度倒産に追い込まれています。そして、1994年に Federated Department Store に統合され、本社はニューヨークからオハイオ州に移りました。あの頃は、ショッピングモールが郊外に沢山できていて、町中にあるデパートに行く人は少なかったように思います。しかも、1980年代頃、どこの大都市もダウンタウンは治安が悪く、わざわざ電車を使って買い物に行くような場所ではありませんでした。

Macy's ブランドは知名度が非常に高いので、2007年、Federated Department Store は Macy's Inc. に社名を変更しています。FD Storeはその他にも数々のデパートを買収していて、その一つは Bloomingdale's です。現在は、買収した多くのデパートも含めて、Macy's と Bloomingdale's の名前で営業を続けています。

最近はネット販売や IT 関連にも力を注いでいて、1916年にはデパートとしては初めて Apple Store を店内にオープンしています。

最後に、1902年開業の Macy's Herald Square には有名なエスカレーターが残っています。開業当時、32機のエレベーターと 4機の "木製" エスカレーターが設置されたのですが、その “木製” エスカレーターが現存しているのです。エスカレーターがデパートに設置されたのは Macy's がアメリカ初です。1986年に初めて訪れたときは、薄暗くて天井も低く、なんと古めかしいデパートなんだと驚いたものです。その頃の私は近代的な建造物しか見ること無かったので、エレベーターにはほんとに驚きました。Macy's にその後も何度か足を運んでいますが、2015年に最後に行ったときも、確かに “木製” エレベーターは現役で動いていました。たしか、上階の方に残っていたように思います。

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